研究概要 |
グリア細胞に出現する嗜銀性異常構造物には、タウ陽性のglial fibrillary tangle(GFT)とargyrophilic thread(AT)があり、アストロサイト、オリゴデンドログリアのいずれにも形態の異なる数種のタイプが認められた。グリア細胞種、形態により分類を行った。この分類に従って、各タイプのGFTとATについて、組織化学および免疫組織化学的性質、ガリアス電顕と免疫電顕所見をNFTと比較した。GFTはNFTと異なりユビキチン等のタウ附属蛋白を伴わず、タウ蛋白のアイソフォルムのうちで短いタイプのみで構成されていた。電顕検索ではGFT,ATともにNFTとは異なり線維形成に乏しかった。各タイプのGFTには異なる疾患親和性が認められた。とくに進行性核上性麻痺と皮質基底核変性症はニューロン・グリア変性疾患であることが明かとなった。 ラット初代培養アストロサイトを用いた実験ではカルシウムイオノホアによりカルシウムイオンの細胞内流入とフォスファターゼ阻害剤のオカダ酸の使用でともに対照に比し、タウ蛋白の異常リン酸化が認められたが、免疫電顕検索ではリン酸化タウ蛋白に線維化は認められなかった。さらにヒトグリオーマ由来培養細胞についても同様の実験を行ったが同じ結果であった。これらの結果は異常リン酸化タウ蛋白の線維化は動物種の違いによるものでないこと、異常リン酸化と線維化は異なるプロセスであることを示している。
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