我々は、1994年以来一貫してADの危険因子の検討とADの生物学的診断マーカーの開発に努めてきた。ApoEe4 alleleの頻度は、ADにおいて33.5%と対照(11.7%)に比して、有意に増加していた。 また、ADの発症年齢は、ApoEe4の量に依存して若年化する傾向が認められた。痴呆を有するパーキンソン病や汎発性レビー小体病でも、ApoEe4の頻度は増加していた。 一方、PSP、血管性痴呆およびアルコール性痴呆においてはApoEe4の頻度の増加は、認められなかった。 最近の我々の186名を用いた検討では、CSF-τによりADを診断しうる精度は、感度93.8%、特異性75%であった。AD以外の神経性疾患としては、汎発性レビー小体病や前頭葉型痴呆でもCSF-τは高値を示すことが明らかとなり、現在のCSF-τ測定法は、その疾患特異性にやや問題があることが考えられるが、ADを早期に検出し、予測因子として重要であることが示唆されている。一方、血中Ab測定は、一部の家族性ADにおいては、高値を示すが、ADの大部分を占める孤発性ADにおいては、対照正常者と変化なく、診断マーカーとしては使用できないことが明らかとなった。Glutamyl aminopeptidlaseは、AbのN末端を切断する酵素として重要で、Ab沈着に何らかの役割を担っている酵素と考えられるが、この酵素の血中濃度が低いADの一群が存在し、Ab沈着機序との関連が考えられる。ADのtropicamideによる瞳孔散大試験は、我々の詳細な検討の結果、ADの診断には用いられないことが明らかとなった。さらに我々は、Positro Emission Tomographyを用い、ApoEとal-アンチキモトリプシン遺伝子(ACT)の神経機能における役割を検討し、ApoEe4対立遺伝子保有者において、前頭葉の糖代謝が有意に保たれ、ACT/A対立遺伝子保有者では、側頭・側頂葉における糖代謝が有意に障害されていることを最近明らかにした。
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