脳のアリルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)は、未知の内因性アリルアミンを基質とし、ニューロンの機能あるいはそれを防御維持する役割を担っていることが考えられる.脳におけるNATの分布を明らかにすると共に、NATが"キヌレニン経路"の制御に関与しているかについて検討を行っている. 1)ラット脳におけるN-アセチルトランスフェラーゼの局在について 特異性の高いin situ PCR法により局在を検討することにした.予備実験として、pNAT-AとpNAT-Bのジゴキシゲニンラベルのプローブを作製し、アルカリフォスファターゼラベルの抗ジゴキシゲニン抗体により検出することとした.ラット肝臓RNAに対してノザンハイブリダイゼーションを施行し条件を検討した.一方、pNAT-AとpNAT-Bに特異的なプライマーを合成し、PCR法により、pNAT-AとpNAT-Bを区別する条件を検討した.現在はこれらの条件を考慮に入れながら、ラット脳を潅流固定後、パラフィン切片を作製し、それに対して、PCRを行っているところである. 2)N-アセチルトランスフェラーゼ活性の高い細胞の検索 ラットの脳由来の各種培養細胞をホモジナイズして、発色法によりN-アセチルトランスフェラーゼの活性を検出中である. 3)脳内N'-アセチル-L-キヌレニンの実証 N'-アセチル-L-キヌレニンとd3-N'-アセチル-L-キヌレニンを化学合成した。大腸菌にヒスチジンタグを付けてpNAT-AとpNAT-Bを発現させ、タグにより精製した.これを酵素源としてキヌレニンのアセチル化反応を行い、HPLCにて産物を分離したUV266nmにて検出した.これをN'-アセチル-L-キヌレニンとd3-N'-アセチル-L-キヌレニンの移動度と比較したが、これらのピーク以外の未知の物質が生成し、この同定をおこなっているところである.
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