我々が開発したエピトープ・タギング法によってin vivoで転写制御因子UNC-86が作用している標的遺伝子制御領域の同定を行った.unc-86ゲノムDNA全域を含むDNA断片を単離し、このコード領域にin frameになるようにGFPのcDNAを挿入してUNC-86/GFP融合蛋白質を発現するプラスミドを作成した.このDNAは線虫のunc-86変異体の表現型を野性型に回復した.このストレインより核を単離し、核蛋白質とDNAを架橋した.これを個々のムクレオソームに断片化して上述の抗GFP抗体にて抗原複合体を精製した.抗原複合体精製したDNAの共有結合を解離した後、既知のUNC-86結合部位と対照部位で比較し、既知のUNC-86結合部位が圧倒的に効率良く回収されることを確認し、ライブラリを作成した.インサートをシークエンス解析して、線虫の染色体のどの部位に相当するかを調べた.これまでに、線虫ゲノム上に29ヶ所のユニークなDNA断片を同定することができた.この内で、エンハンサーまたはプロモーターなどの可能性の高い部位であったものは、24ヵ所であった.これらのDNA断片が実際のUNC-86の制御を受けている可能性は、24個の内3個がunc-86自身の自己制御領域DNAであったことから支持される.残り21個の中で変異体が記載されている遺伝子は1個で軸索走行に関与しており、HSNニューロンの分化制御遺伝子の遺伝学的解析によってunc-86遺伝子の一段階下流で作用していることも知られており、実際の制御を受けている遺伝子である可能性が示唆される.残り20個の中で、多く(10個)は、既知遺伝子との相同性から、神経系で機能している可能性が示唆され、その他、未知の構造を有するものについては機能的情報は無く、今後の解析で神経発生や神経機能との関わりの検定および、分子機構などを解析する材料となる.
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