研究概要 |
G蛋白質と連関して活性調節を受ける、K_<ACh>チャンネル(Kir,3.1)およびK_<ATP>チャンネル複合体(チャンネル部分のKir6.2と糖尿病薬のsulfonylurea受容体(SUR))の、G蛋白質による調節の分子機構と脳におけるその生理的機能を明らかにするため、これらのK^+チャンネルを外来性に導入したトランスジェニックマウス(Tgと略)作製を試みた。1)ラット由来のSUR1、Kir6.2、Kir3.1cDNAをそれぞれテトラサイクリン誘導発現プロモーターの下流に組み換えた。これらのDNAとテトラサイクリン誘導発現プロモーターのON/OFF調節のためtTA(teto binding transactivator)DNAをマウス受精卵の雄核に微量注入し、偽妊娠マウスの卵管に移植し、仔を出産させた。2)PCR法やSouthern法を用いて、交配を繰り返すことにより各Tgを2系統樹立した。3)SUR1-Tgの2系統いずれも、生後の体重増加率が小さく、死亡率も高かった。この特徴は、ヘテロマウスよりもホモマウスでさらに強く表れることが分かった。従って、SUR1-Tgで見られたこれらの特徴は、SUR1が発現されたことによる表現型であることが強く示唆された。現在、SUR1-Tgの血中ホルモン濃度の測定、各臓器の病理検査、組織切片の電気生理学的測定により、低体重増加率や死亡の原因を探索中である。4)Kir6.2-Tgの表現型は、現時点で野生型と区別できなかった。今後、tTA-TgやSUR1-Tgと交配を行い、その表現型を観察する予定である。5)複数の試行にも関わらず、Kir3.1-Tgは生まれてこなかった。Kir3.1がわずかでも発現されると、胎児の段階で死亡する可能性も含めて、その原因を検討して行きたい。
|