研究概要 |
平成7年度、PC12D細胞で検討した結果、RNAやタンパク質の合成が完全に阻害された条件下で、神経突起の誘導が可能であること、更に、MAPKの活性化を阻害した条件でNGFによる神経突起誘導、ラッフルの形成なとが維持されることを示した(1996a,b)。しかし、オリジナルPC12細胞では、神経突起誘導に、MAPキナーゼの活性化、RNA,蛋白質の合成が不可欠と云われており、その違いを追求する意味から、MAPキナーゼシグナルの上流に位置するRasの関与を調べる目的で、機能欠損の変異ras遺伝子Ha-ras Asn-17を導入したPC12D細胞を作成した。デキサメサゾン処理によって、正常のRas蛋白の機能が抑制される。この条件で、dbcAMPによる突起誘導は影響されず、NGF,bFGFによる突起伸展が起こらなくなった。この事実から、PC12D細胞のNGF,bFGFによる突起伸展誘導は、Rasの活性化を必要とするが、このシグナルは、MARK,遺伝子制御以外の過程を経て、突起を誘導する事が示唆された。オリジナルのPC12細胞もNGFで前処理(primed)された場合には、MAPK活性化を抑制しても、神経突起が誘導された。今後、NGFによる神経突起誘導の研究は、primed PC12或いはPC12D細胞などを用いて、遺伝子制御の関る細胞分化過程と分離して検討すべきである。
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