研究概要 |
NGFによって神経突起が誘導される現象は、MAPキナーゼシグナル伝達系の活性化に基ずく遺伝子制御によるとの仮説が、、多くの総説で確定したごとく表現されている。我々が進めてきたPC12D細胞の系で、NGFによる神経突起誘導におけるMAPKシグナルの関与について、再検討する事が本研究の目的であた。(1)神経突起がNGFに反応し、神経突起が伸びる現象は、細胞の局所で起こる事が、培養交感神経軸索では示唆されていた。PC12D細胞を用いて、核除去の細胞のNGFに対する感受性、微小ピヘットからのNGFに細胞局所が反応するなど、NGFが局所作用を示すことが示された(Brain Res.1996a)。(2)NGFによる神経突起誘導に、RNA,タンパク質の合成がかかわるか否かについては、PC12細胞では、必要であり、議論されている。PC12D細胞で検討した結果、少なくとも短時間では、RNAやタンパク質の合成が完全に阻害された条件下で、神経突起の誘導が可能であることが実証された(Brain Res.1996b)。(3)MAPKを制御する酵素MEKの特異的阻害剤PD98059をPC12D細胞に処理すると、NGFによるMAPKの活性化は阻害されたが、この条件で神経突起誘導、ラッフルの形成、生存維持作用など、多くのNGF作用が維持された。NGF作用は必ずしも、MAPKの活性化をシグナルとするものではない事を示唆出来た(Brain Res.1998;Curr.Topics in Neurochem.,1997)。
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