下垂体GH細胞がGHRH受容体とSRIF受容体を発現していることはよく知られている。本研究ではそれ以外の下垂体細胞、特に濾胞星状細胞にこれらの受容体が発現しているか否かを明らかにするのが第一の目的である。そこで各受容体に対する抗体を作成し初代培養ラット下垂体細胞の免疫染色を行ったが、いまだ、特異的な染色には成功していない。ただし、GHRH受容体のin situ hybridizationでは、GH細胞と濾胞星状細胞が特異的に染色された。同様の方法でSRIF受容体についても追求中である。一方これら受容体の機能について、細胞内遊離カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)の動態を指標に実験をすすめているので以下にその中間報告を行う。酵素処理で分散したラット下垂体細胞を1〜3日間培養し実験に供した。Fura2を蛍光プローブとし、Applied Imaging社製のQuanticell 700を用いて濾胞星状細胞の[Ca^<2+>]_iを測定した。実験は室温(25〜30C)で行った。記録した濾胞星状細胞の約50%(140/281)が10nM GHRHに応答した。応答は促進から抑制までいくつかのパターンがみられた。すなわち反応した濾胞星状細胞の約40%がGHRH投与時に[Ca^<2+>]_i上昇(ON反応)を示した。約9%の濾胞星状細胞はGHRH除去後に[Ca^<2+>]_i上昇(OFF反応)を示し、約5%の細胞はGHRH投与により[Ca^<2+>]_i低下(抑制反応)を示した。その他の濾胞星状細胞は上記反応の2種類以上の組み合わせ型を示した。以上からGHRH受容体が濾胞星状細胞に存在し、GHRHが濾胞星状細胞にも作用することが明らかになった。おそらくGHRHは濾胞星状細胞に作用して、NOやその他の生理活性物質の合成と分泌を調節し、パラクリン機構を介してGH分泌を修飾していると考えられる。
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