本研究では初代培養オスラット下垂体細胞におけるSRIFとGHRHの作用を解析し、その生理的意義を考察した。対象とした細胞は成長ホルモン含有細胞(GH細胞)と濾胞星状細胞である。 第一に、GH細胞における上記ペプチドの作用を穿孔パッチクランプ法で解析し、以下の結果を得た。GHRHは膜電位依存性ナトリウム電流を増強した。さらに、-60mVよりも脱分極側で活性化される持続性ナトリウム電流を誘起した。前者はテトロドトキシン(TTX)で完全にブロックされるのに対して、後者は全く抑制されなかった。また、SFIFは膜電位依存性ナトリウム電流には影響しなかったが、GHRHで誘起される持続性ナトリウム電流を減弱した。以上からGHRHは膜電位依存性ナトリウム電流増強を介して成長ホルモンの基礎分泌を抗進すると考えられる。さらにTTX非感受性ナトリウムチャンネルを活性化し、脱分極を引き起こすことによって、膜電位依存性カルシウムチャンネルを活性化し、GH分泌を促進すると考えられる。またSRIFはカリウムチャンネル活性化による過分極に加えて、TTX非感受性ナトリウム電流を減弱することによってGH分泌を抑制すると考えられる。 第二に、濾胞星状細胞におけるこれらのペプチドの作用を細胞内カルシウムイメイジング法で解析した。約30%の細胞がGHRHに応答して細胞内カルシウム濃度を変化させた。そのうち、95%の細胞はカルシウム濃度の上昇を、その他の5%の細胞は低下を示した。これらの反応は外液カルシウム除去で完全に抑制された。またSRIFはGHRHによる反応を抑制したが、約30%の細胞ではSRIFによる抑制は見られなかった。以上からGHRHやSRIFは下垂体濾胞星状細胞にも作用し、その機能を調節していると考えられる。
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