本研究は大脳皮質の帯状皮質運動野の機能的特性、特に報酬の量を自己評価して行うべき運動を選択するような状況にこの部位がどのように関与しているかを明らかにするために計画されたものである。ニホンザルに以下の運動課題を学習させた。 サルが右手をホールドポジションに保と、2.5・4.5秒後に運動のトリガ信号であるライトが点燈する。この時サルは「押す」あるいは「回す」のいずれかの動作を選択して行い、正解なら報酬が得られる(任意の一つを正解と決めておく)。一度正解をみつけたあとは、同じ動作を繰り返すことにより報酬が得られるが、ランダムな試行回数(5-12回)後報酬の量が次第に減少する。この時、繰り返してきた動作と違うもう一つの動作を行えば報酬の量が元に戻る。ただし、報酬の量が減少していない時に動作を切り換えたときは不正解となる。 二匹のサルの吻・尾側帯状皮質運動野から、それぞれ131個および117個の細胞で課題関連活動を記録した。吻側部では131個中37個(28%)の細胞は報酬の量にもとづきこれまで行って来た運動を他の運動に変える際に特異的な活動を示した。尾側部および同時に記録した一時運動野ではこのような細胞活動を示すものはほとんど見られず大多数は運動の開始に関連する活動であった。この結果は吻側帯状皮質運動野が報酬の評価に基づく動作の選択に深く関与していることを示している。
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