炎症メディエーターによる侵害受容器の感作機構に終末部の脱分極が関わっているかどうかを、受容器終末の興奮性試験(閾値の変化)を使って調べた。イヌ精巣-上精巣神経標本を用い、単一のポリモーダル受容器から活動電位を記録した。機械的な受容野において興奮閾値をマッピングし、最も閾値の低い点で興奮性テストを行った。脱分極を確実に引き起こす高カリウム液(12、18mM)は、一時的にわずかの放電増加を生じ、かつ6-24%、11-23%の閾値の低下を生じた。しかし、濃度依存性は明瞭ではなかった。ブラジキニン(BK)3nMは放電増加も閾値低下も生じなかった。10nM以上の濃度では、放電増加があまり大きくない場合には閾値の低下が観察されたが、放電増加が大きな場合には閾値の上昇がみられることが多かった。BKは放電増加を生じない濃度でもポリモーダル受容器の熱反応を大きく増大させるが、そのような濃度においては本方法によって閾値変化を検出することはできなかった。この原因としては、興奮性を調べている部位以外の受容野から生じた放電と興奮性試験によって生じた放電とが衝突して見かけ上の閾値上昇を起こしている可能性が考えられた。そこで電極内潅流刺激法を開発し、局所的に1つの受容野を化学物質で刺激することを試みた。BK10μMは一部の受容器(受容点)に放電誘発を生じたが、受容野全体を刺激した場合とは異なりこの放電は5分間の投与期間中持続することはなかった。同時に行なった興奮性試験では、13%、37%の興奮閾値の上昇が見られ、やはり閾値の低下は観察できなかった。閾値に近い低い濃度を用いた場合の変化についてはさらに検討が必要である。この電極内潅流法を用いることにより、反応を生じた終末を蛍光色素で標識し可視化できることを示した。
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