当初の実験計画では初年度にスンクスにおける錐体路、錐体外路及び運動制御系についてHRP標識法により明らかにし、次いでそれら諸核及び、大脳基底核-黒質系の免疫組織化学を行う予定であった。しかし、食虫目に属するスンクスはげっ歯目などとは著しく異なった特徴を中枢神経系に於いても示す。インプットである感覚器系のアンバランスな発達、即ち、嗅覚と三叉神経の巨大な発達と視覚系の小ささである。 また、大脳新皮質領域が極めて小さく、行動は大きく大脳基底核、脳幹錐体外路中枢に依存していることが予測される。そこで先ず次の実験を行った。 1.スンクスにおける錐体路起始細胞の分布範囲 2.錐体外路系脊髄遠心路の起始細胞の同定 3.小脳求心性神経の起始核の同定 本実験で明らかになったことは、スンクスでは大脳皮質からの皮質脊髄路及び皮質橋路は齧歯類に比べ極めて貧弱である一方、中脳以下の反射性運動径路はよく発達している。従って、行動は大脳皮質によって触発されはするもののその継続については反射性径路がより重要な働きをしているものと考えられる。 本実験により明らかにされたスンクスにおける脊髄への下行路の起始核は、通常の光顕染色では核の欠失などの重大な異常は発見されなかった。
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