初年度には内耳の先天異常の有無を明らかにするため、連続切片による膜迷路の形態、コルチ器・前庭嚢斑・膨大部稜・前庭蝸牛神経節の組織学的検索を行うとともに、立体構築ソフトOZを用いて迷路の三次元立体構築を行ったが、得られた所見はいずれも内耳の形態学的異常を否定するものであった。また脊髄へ下行路を送る起始細胞の確認を行った。延髄では広く網様体に、橋では前庭核の広い範囲に、中脳では大型の細胞からなる赤核およびその前後の傍核に標識が見られる他、四丘体の深灰白層、三叉神経中脳路核、カハール間質核も標識された。大脳における皮質脊髄路の起始細胞は、大脳ほぼ中央の背側部に限局している。 これらの所見から、脳幹部における起始核は基本的にはラットなどで得られる所見と類似するが、皮質脊髄路と比較したとき、脳幹部への依存度が齧歯類より大きいものと推察される。 脊髄へ遠心性線維を送る錐体路系及び錐体外路系起始細胞について、明らかにしたので、次いでこれら運動系に調節性(抑制性)機能を果たすと思われる小脳の関与を明らかにするため、小脳求心性線維の起始核を明らかにする実験を計画した。 小脳虫部及び半球に5%HRP溶液1-5μ1をガラス微小電極を用いて注入し、24-36時間後灌流固定を行い、凍結連続切片を作成した。呈色反応はMesulumのコバルト置換TMB法によって行った。 虫部へのHRP注入により外側楔上束核、台形体、下オリーブ核、外側網様核が標識されたが、橋核には標識細胞は見られなかった。一方、半球へのHRP投与では橋核が標識されたが、かなり部位局在性があるように思われる。
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