研究概要 |
わが国の動物実験関係者に見られたHFRS患者発生は,汚染ラットに因る者であることが明らかになっている。このことから、動物実験環境下に於けるラット間のhantavirus伝播様式(垂直・水平感染)の検討を行ってきた。その後1990年代になって再び抵抗体価保有ラットが検出されこのラットの感染性についても検討した。 われわれは、先天性免疫機能不全症であるnuce ratがhantavirusに対し高い感受性を示すことを明らかにした。そこでこのラットをincicatorとして、virus接種ラットのvirus排出時期、残留virusの感染性及びエア-による感染を検討したところ、virus接種ラットは16週までケージ内感染が成立し、感染ラットを収容した使用済ケージいわゆる残留virusによる感染成立は15週まででその後は感染成立は認められなかった。しかしながら、virus接種ラットはその後も高抗体価を維持し、接種後2〜3年経過したものより分離可能であった。 そこで、野生型ラットにcyclophoshamideを投与し免疫機能不全症としこのラットとvirus接種野生型ラットを同一ケージ内で飼育し、又一方このラットにvirus接種し野生型ラットと同一ケージ内飼育した結果、何れの場合も抗体価が上昇しこの様な処置をしない野生型ラット間では認められなかった感染が成立した。更に、低値ながら抗体価を保有するラットにcyclophoshamideを投与しnuderatと同一ケージ内で飼育したところ、投与前には認められなかった感染が成立した。 以上、抗体価を保有するラットは値及び期間に関係なく免疫不全状態にする事により感染性virusを排出しケージ内感染が成立することを明らかにした。また野生型ラットも免疫機能低下により多量の活性virusを排出すると共に、また一方容易に感染が成立することも明らかとなり、実験動物が様々な実験処置をされ免疫機能が低下する事によりvirus伝播の大きな要因になりうることが示唆された。
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