研究概要 |
つくば高血圧(R/A)マウス雄の血圧は、3カ月齢で対照マウス(C57BL/6J)に比べ平均10mmHg高く、9、12カ月齢では平均30〜40mmHgも高かった。R/Aマウス雄の心重量は、1カ月齢で、対照マウスに比べ既に大きく、2カ月齢で約200mg、3カ月齢で350mg、12カ月齢で480mgと対照群に比べ有意に大きかった。腎重量はR/Aマウスでは、月齢と共に増加したが、9カ月齢までは対照群との間に特に差異はみられなかった。しかしながら、12カ月齢では対照群に比べ増大した。 R/Aマウスの心筋細胞は肥大し、1〜3カ月齢までは対照群より幾分大きかったが、5、9、12カ月齢と月齢が進むにつれさらに明らかとなった。組織学的に、他の心肥大の心筋細胞に通常みられるとうな空胞、ミエリン様構造物、リポフスチン顆粒などを持つ変性細胞は殆どみられなかった。R/Aマウス腎臓の曲尿細管細胞には、電顕的にdense bodyが月齢と伴に増加し、糸球体の基底膜の肥厚が認められた。胸大動脈、腹大動脈、冠動脈には動脈硬化と考えられる像はみられなかった。 R/Aマウスの心耳筋細胞のANP顆粒の数は,1、2、カ月齢までは対照群との間に差異はみられなかったが、3カ月齢以降有意に増加し、免疫組織学的にも強く反応し、ANPmRNAの発現も高かった。また、ANP顆粒の大きさには特に差異はみられなかった。R/Aマウスの血中および心筋、胸大動脈の組織内アンジオテンシンIIの濃度は、12カ月齢まではR/A間および対照群間に差異はみられなかったが、腎アンジオテンシンIIはR/Aマウスの9、12カ月齢で有意に低い値を示した。今後、高血圧症の加齢性変化を含め、今回得られたR/Aマウスの心筋、腎臓の組織変化およびANP、アンジオテンシンIIの動態についてさらに検討する。
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