つくば高血圧(R/A)マウスの心房筋、心室筋及び血中の心房性Na利尿ペプチド(ANP)の分布と高血圧症の病態を組織学的並びに生化学的に検索した。R/Aマウス雄の血圧は、対照マウス(C57BL/6J)に比べ、3カ月齢では平均30〜40mmHgも高く、加齢と伴に高くなる傾向を示し、18カ月齢で200.8±4.8mmHgと12カ月齢以降上昇はみられなかった。R/Aマウス雄の心重量は、対照マウスに比べいずれの月齢とも有意に大きかったが、各月齢とも固体差が大きく(18カ月齢で138〜206mg)、15カ月齢で350mg以上を示す固体もみられた。R/Aマウスの腎重量は、心重量と同様、固体差が大きく、18カ月齢で135〜182mg(159.8±17.8mg)であった。R/Aマウスの心筋細胞は肥大し、月齢が進むにつれてされに明らかとなった。R/Aマウス腎臓の糸球体の基底膜の肥厚が認められた。また、肝臓の小間間動脈、静脈が拡張した例もみられた。R/Aマウスの心耳筋細胞のANP顆粒の数は、3カ月齢では有意に増加し、免疫学的にも強く反応したが、12、15、18カ月齢では顆粒数、反応が減少した。ANPmRNAの発現は幾分高かった。血中、心室のANP濃度は、減少の傾向を示したが、心房では増加を示した。R/Aマウスの胸大動脈の組織内アンジオテンシンllの濃度は、18カ月齢までR/Aマウス間および対照群間に差異はみられなかったが、心肥大の著しい例では高い値を示した。アンジオテンシン変換酵素阻害薬キナプリン投与により血圧上昇が抑えられ、心重量も同月齢のものに比べ小さかった。R/Aマウスの心室筋細胞には、ANP顆粒と思われる顆粒がみられたが、対照マウスにはみられなった。本顆粒を持つ心室筋細胞が加齢と伴に増加した。以上より、つくば高血圧マウスのANP動態と高血圧症の病態は、加齢と伴にその機序が変化することが示唆された。
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