前年度の研究結果より腸管神経節欠損ラットはエンドセリンタイプBレセプターEDNRBゲノムの一部欠欠によりEDNRBの発現が極度に減少していること、またその欠失の結果異常なmRNAのスプライシングが起こり第2エクソンの殆どが欠失したmRNAを産生することが判明した。この欠欠した部分はレセプターのシグナル伝達に重要な部位であることから、たとえ少量ながらレセプターが発現したとしてもリガンドの結合によるシグナルの伝達は行われないことが予想された。そこでこのラットをエンドセリンの薬理学的解析に用いることとした。エンドセリンの血圧に対する作用は既にこれまで多くの研究がなされているので、その他の作用について調べることとした。我々は以前にラット骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌がエンドセリンにより調節を受けていることを既に報告しているので、この作用を腸管神経節欠損ラットを用いて解析を試みた。しかしながら理由は分からないが、ヘテロ及びワイルドタイプコントロールラットにおいてもエンドセリンによるIL-6分泌の増強が見られなかった。従ってこのミュータントラットを使ってのエンドセリン刺激による骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌の実験はできなかった。しかしながら、我々はこれとは別に他の血圧調節ホルモンvasoactive intestina peptide (VIP)及びpituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)が第3のPACAP/VIPレセプターを介してラット骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌を増強させていることを発見することができた。
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