腸管神経節欠損ラットの肺において、エンドセリンタイプBレセプター(Ednrb)遺伝子の発現をNorthern blot解析により調べたところ、このラットにおいてこの遺伝子の発現が著明に減少していることを見い出した。更にEdnrbのmRNAについて、RT-PCR法により解析したところ、このラットにおいては2種類の異常なサイズのEdnrb mRNAが発現されていることが明らかになった。この配列をEdnrbゲノム遺伝子の配列と比べた結果、一つは第2エクソンの翻訳開始コドンから数えて第20番ヌクレオチドから第2エクソンの終わり(第483番ヌクレオチド)までの458bpが欠失したもの、もう一つは第2エクソンの第213番ヌクレオチドから同じく第2エクソンの終わりまでの270bpが欠失したものであることが判明した。以上の結果から、このラットにおいては、Ednrb遺伝子の発現が著明に低下していること、及び発現したmRNAも異常なスプライシングの結果その一部を欠失していることが、本ラットにおける腸管神経節欠損の原因であることが推察された。 我々は以前にラット骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌がエンドセリンの調節を受けていることを既に報告しているので、この作用を腸管神経節欠損ラットを用いて解析を試みた。しかしながらヘテロ及びワイルドタイプのコントロールラットにおいてさえもエンドセリンによるIL-6分泌の増強が見られなかった。従ってこのミュータントラットを使ってのエンドセリン刺激による骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌の実験を遂行することは不可能となった。しかしながら、我々はこれとは別に他の血圧調節ホルモンvasoactive intestinal peptide(VIP)及びpituitary adenylate cyclase activating polypeptide(PACAP)が第3のPACAP/VIPレセプターを介してラット骨髄ストローマ細胞からのIL-6分泌を増強させていることを発見することができた。
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