我々は、ヒトポリオレセプター遺伝子導入トランスジェニックマウス(PVR-Tg21)が経口生ワクチンの効果検定に有用な実験モデル動物に成りうるかどうかを免疫学的観点から検討した。本研究に於いて、弱毒Sabin 1型ポリオウイルスを免疫原(経口ワクチン)とし、消化管内で増殖後、体内に伝幡し、脳内で増殖し致死に至る事が知られているポリをウイルスMohoney株由来MN341を感染ウイルスとして用いた。(1)PVR-Tg21をSabin 1株で経口免疫した場合、MN341の経口感染を100%防御する事が出来た。非経口免疫群では、全マウスがMN341感染7日目までに死亡した。 (2)Sabin 1株経口免疫に於いて、糞便中のウイルス特異的IgA抗体価の上昇及びウイルス中和抗体価が確認された。(3)経口免疫群のウイルス価は、感染10日目には糞便及び血清中から検出されなかった。(4)MN341経口感染時のパイエイル板や腸管上皮内Tリンパ球(IEL)数は、感染7日目に減少したが、それ以降感染前と同数までに回復した。(5)パイエル板中のCD4陽性細胞は、IL-4を著明に産生する事が認められた。更にIL-2産生細胞もかなりの割合で存在した。しかし、IELに於いては殆ど変化が認められなかった。以上の結果は、PVR-Tg21を用いたこの実験系はヒトポリオウイルス感染時の免疫系を反映していた。従って、この実験系はポリオ経口生ワクチンの開発に対応出来るマウスモデルであることが示唆された。
|