ラットは、薬物の毒性、薬効評価のための前臨床試験、微生物学的研究、発癌性実験、栄養学、生理学、学習行動学など広い分野の研究に用いられている。一方、これら研究の基礎となるラットの解剖学書は、死体を固定し、イラスト化または一部写真画像として表示したものが多く、それらの画像だけでは、動物実験を行おうとする初学者にとって十分とは言い難い状況が想像された。また近年CT(computed tomography)、超音波エコーおよびMRI(magnetic resonance imaging)等のコンピュータを利用した断層診断装置の発達により、生体内の情報が無侵襲に手に入るようになり臨床診断や研究に大きく貢献している。これらの画像解析には断面的・立体的な解剖学的知識がより一層要求される関係から、生体の情報が理解しやすいかたちの解剖学の参考書が要望されるようになってきた。 本研究の目的は、上記の要求を満たすような最先端研究に役立つラットの解剖学書を作成することであった。幸い当初の計画どおりに研究が進み、本研究の成果として、実験動物用ラットの矢状断、水平断、前頭断および関連する肉眼写真を体系的に配列した解剖学のカラーアトラス集(実験動物の断面解剖アトラス・ラット編:チクサン出版.東京)を出版することができた。
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