実験動物の心・血管系に及ぼす環境温度の影響を明らかにすることを目的とし、本年度(平成8年度)は以下の研究を実施した。1.テレメトリー自動計測システムによる血圧・心拍数・体温測定;ラットを用い、高温暴露群として通常環境下(飼育温度;22℃)から高温環境下(33℃)にて24時間飼育後、通常環境下に戻し24時間観察した。同様に低温暴露群として通常環境下から低温環境下(15℃)にて24時間飼育後、通常環境下に戻し24時間観察し、各群における血圧・心拍数・体温の変化をテレメトリー自動計測システムにて測定した。尚、通常環境下にて飼育したラットでの血圧・心拍数・体温を正常値とした。(1)高温暴露群;血圧は高温暴露1時間後より正常値に比べ有意に上昇し、時間経過と共に徐々に上昇する傾向にあった。その後、通常環境下に戻すと2〜3時間後に正常値になった。心拍数は高温暴露後正常値との差は見られなかったが、通常環境下に戻すと有意に上昇し、18〜20時間程正常値に戻らなかった。体温は高温暴露後正常値に比べ有意に上昇し、時間経過と共に徐々に上昇する傾向にあり、その後、通常環境下に戻すと1〜2時間後に正常値になった。(2)低温暴露群;血圧、体温共に変化は見られず、通常環境下に戻しても正常値のままであった。心拍数は暴露後正常値に比べ有意に上昇し、24時間上下を繰り返し推移した。その後、通常環境下に戻すと1時間後に正常値になった。2.内分泌学的検索のための検体採取時期の決定;1で得られたデータより、高温暴露群では暴露後血圧・体温に変化が生じ、通常環境下に戻すと心拍数に変化が認められた。また、低温暴露群では暴露後心拍数のみに変化が認められた。従って、高温・低温暴露群共に、暴露1、3、6、12、24時間後に、さらに、暴露後通常環境下に戻し同様の経過時間に血漿・心臓を採取することを決定し、実施した。
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