研究概要 |
実験動物の心・血管系に及ぼす環境温度の影響を明らかにすることを目的とし,本年度(平成9年度)は以下の研究を実施した。【材料及び方法】生後11週齢のJcl:Wistar系雄ラット66例を用い,高温(33℃)及び低温(15℃)飼育群として各々暴露1,3,6,12及び24時間後に,さらに24時間高温及び低温暴露後,通常環境下に戻し同様の経過時間に血漿・心臓を採取した。なお対照群として22℃飼育群を用い,各群の血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度をラジオイムノアッセイ(RIA)にて測定し,心房筋細胞内のANP分泌顆粒を免疫組織化学的ならびに電子顕微鏡学的に検索した。【結果及び考察】高温暴露後の血漿ANP濃度は,何れも対照群に比べ有意に高値であり,高温暴露6時間後に3時間後に比べ減少したが,その後24時間後まで上昇し続けた。高温暴露から通常環境下に戻し1時間後の血漿ANP濃度は対照群と比べ有意に高かったが,3時間後には正常値になった。低温暴露後の血漿ANP濃度は,暴露1時間後のみ対照群に比べ有意に高値であったが,その後対照群と比べ有意な変化は認められなかった。免疫組織化学的に心房筋細胞は,高温暴露3時間後対照群に比べANP抗体に強く反応し,6時間後には対照群に比べ弱くなったが,その後12時間後に反応は強くなり,24時間後には最も強く反応した。高温暴露から通常環境下に戻し1時間後の心房筋細胞は免疫組織化学的に強く反応したが,その後対照群と比べ変化は認められなかった。低温暴露群の心房筋細胞は,暴露1時間後のみ対照群に比べANP抗体に強く反応したが,その後変化は認められなかった。電顕的に各群の心房筋細胞内のANP顆粒数は,免疫組織化学的に反応が強いものは多く,弱いものは少なく,免疫組織化学的な結果と一致していた。以上の結果より,高温環境はANP合成・分泌機序に顕著な影響を与えることが示唆された。
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