研究概要 |
血管あるいは神経が損傷した場合,器材マトリックスから積極的に組織の再生修復を補助誘導するような医用材料を研究,開発することを目的とする.高分子絶縁材料に負イオン注入法を適用すれば,LSl等のように材料表面を高精度に制御できることが期待できる. 本研究では,まず銀負イオンを細胞培養用ポリスチレン(TCPS)に注入することを試みた.その注入エネルギーは比較的低い,5Kevから30Kev,また銀負イオン注入量は1×10^<14>から5×10^<16>イオン/cm_2の範囲で検討した.銀負イオンの注入をXPSでは検出できなかったが,RBS,SIMS等では銀負イオンの注入を検出できた.おそらく,XPSでは材料表面の比較的深度の浅い領域の測定値を与えるので検出できなかったと考えらる.次に,銀負イオン注入TCPSを2日から4日間浸漬した水について,本研究申請の(株)堀場製作所製カスタニ-LABイオンメータを利用して銀負イオンの漏出を調べた.注入銀負イオンがほぼ全て水に溶解すれば検出可能と考えたが(検出濃度は1-10^<-7>M),検出できなっかた.即ち,長期の細胞培養中でも注入銀負イオンは材料中に存在する可能性が高いと考えられる. 種々の銀負イオン注入TCPSを数日かけて滅菌処理を行い,ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を高密度に播種し,銀負イオン注入領域上の生育細胞密度を約20日間調べた.その結果,注入エネルギーが高い程細胞密度は低下したが,銀負イオン注入量と生育細胞密度との間には相関は見られなかった.銀負イオンの注入によって材料表面は疎水性に傾くことが接触角測定から明らかになった.また,接触角と細胞密度とはある相関が見られたので,注入銀負イオンの効果というよりも,材料の親,疎水性の効果が細胞に影響したと考えられる.TCPSよりも疎水性の高分子材料にも銀負イオンを注入を行った.
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