研究概要 |
血管あるいは神経が損傷した場合,器材マトリックス側から積極的に組織の再生修復を補助誘導するような医用材料を研究,開発することを目的とする. 高分子材料は一般に絶縁性であるが,NIABNISから得た銀負イオン(Ag)を負イオン注入法により基材を変形させない程の低エネルギーで注入することができた(平成8年度).本年度では,ポリスチレンに約10^<15>イオン/cm^2量のAgを5KeVから30KeVのエネルギーで注入し,ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を用いて,それらAg注入材料に対する細胞挙動について検討した.播種細胞密度が高くてもポリスチレン上では2日以上生存しなかったが,Ag注入ポリスチレンでは一ヵ月以上の生存を観察した.Ag注入細胞培養用ポリスチレン(TCPS)とは異なって,Ag注入領域の方が細胞密度は明瞭に高かった.注入エネルギー30keVのポリスチレンを除き,注入エネルギーが高い程,細胞密度は増大した.この結果もAg注入TCPSの場合とは異なっていた.銀負イオンの注入によって材料表面は酸化分解,炭化等の化学変化を受け,親水性あるいは疎水性に変化することが考えられる.そして,細胞は注入された銀を嫌うが材料表面の親水,疎水性の効果の方が強く影響したと考えられる. 本年度では神経細胞に関しては準備段階であるが,神経細胞としてPC12を培養し,神経成長因子で処理することによって分化誘導を観察した.Ag注入細胞培養用ポリスチレン(TCPS)の銀を嫌うのが観察され,平成10年度では注入(重金属)負イオンを検討し,その微細パターン化基材を作製,細胞挙動を検討して本研究を遂行予定である.
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