研究概要 |
嚥下障害は高齢者人口の増加に伴い、近年注目され始めたが診断方法等に関しては十分とは言い難い。生体電気インピーダンスは無侵襲的な生体計測法として広く利用されているものであるが、本研究では、頸部電気インピーダンスを用いた新しい計測法としてインピーダンス咽頭図(Impedance Pharyngography,以下IPGと略す)を提案した。本法の簡便であるという特徴はこれからの医療に適するものであると信じる。新たにIPGを提案するに際して、IPGの基本的な計測システムを確立し、IPG波形の生成機序の解明、波形の特徴と分類、嚥下障害者の波形の特徴解析、IPGを用いた診断法の指針、さらにIPGを利用した嚥下機能回復訓練の試みなどを行った。すなわち、 1. 多チャンネルインピーダンス咽頭図(IPG)計測システムの構築 (a)多チャンネルIPGのためのインピーダンス測定装置の製作、(b)計測装置とデータレコーダおよびパソコンからなる計測システムの構築 2. IPG波形の生成機序の解明。IPG波形の各点がそれらのどこに対応しているか、それぞれの波形の違いの原因について、IPGとX線検査との同時測定やリハビリテーション専門医の意見などを参考に検討を行った。 3. 嚥下障害者のIPG波形の解析。大学付属病院の協力を得て、高齢者や嚥下障害者のIPG波形の測定およびX線透視検査を行い、健常者の波形と比較しながら波形の解析を行った。 4. 嚥下障害のIPG波形に及ぼす影響について検討を行った。 5. IPG評価パラメータの決定。嚥下動作を評価するために適するパラメータを決定し、そのためのプログラムを完成させた。 6. IPGの応用として、バイオフィードバックを用いた嚥下のトレーニングを試みて、嚥下障害の新しい治療法についてその可能性を検討した。
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