研究課題/領域番号 |
08680932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
平川 暁子 放送大学, 教養学部, 教授 (00012633)
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研究分担者 |
福本 喜久子 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 講師
石原 一彦 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助教授 (90193341)
濱田 嘉昭 放送大学, 教養学部, 助教授 (90107392)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | ラマン分光法 / 水溶性医用高分子 / リン脂質ポリマー / タンパク質の変性 / 水の構造 |
研究概要 |
1.水溶性高分子溶液中の水分子の集合状態について検討した水溶性高分子としてポリエチレングリコール(PEG)とポリアクリルアミド(PAAm)並びにリン脂質極性基を有するポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)を選択した。それぞれの高分子水溶液のラマンスペクトルを測定し、自由水量を定量した。その結果、PMPC水溶液中ではPEC水溶液中やPAAm水溶液中に比較して自由水量が多いことが確認できた。これより高分子の構造によって周囲の水の構造に与える影響が異なり、特にPMPCは水の構造を破壊しにくいことが示唆された。この結果は示差走査熱量測定(DSC)によっても支持された 2.タンパク質を溶解させた水溶性高分子水溶液中の水分子の集合状態が水溶性高分子の種類、濃度、水溶液の温度によりどのように変化するかを解析した。 (1).Ar+レーザー励起ラマン分光器を用いて、タンパク質を含む水溶性高分子水溶液のスペクトルを測定した。タンパク質として牛血清アルブミン(BSA)を用い、水溶性ポリマーとしてPEG,PMPCを用いた。 その結果、PEG溶液ではBSAを溶解させた直後に自由水量が急激に減少するが、PMPC溶液ではBSAが存在しても自由水量の変化は観察されなかった。 (2).DSCを用いて、タンパク質を含むPEGおよびPMPCの水溶液の0℃付近の吸熱量を測定し、その結果より自由水量を算出した。タンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)を用いた。Ar+レーザー励起ラマン分光器での結果と同様にPEG溶液ではHSAを溶解させた直後に自由水量が急激に減少するが、PMPC溶液ではHSAが存在しても自由水量の変化は観察されなかった。 3.水溶性高分子水溶液中でのタンパク質の構造変化を解析した。 (1).Nd:YAG励起フーリエ変換-ラマン分光器(FT-ラマン)を用いてBSAを含むPEGおよびPMPC溶液のスペクトルを測定した。 その結果、PEG溶液中ではBSAは溶解後24時間までに二次構造、三次構造ともに大きく変化していることが確認された。それに対してPMPC溶液中ではBSAは溶解後72時間まで二次構造、三次構造ともに変化は観察されなかった。 (2).DSCを用いてPEGおよびPMPCの水溶液中のHSAの熱変性にともなう吸熱量を測定し、その結果よりHSAの未変性量を算出した。 FT-ラマンの結果と同様、PEG溶液中では大きな変化が見られたがPMPC溶液中では大きな変化は観察されなかった。 以上のことより、PMPCのように自由水量を減少させないすなわち水の構造に影響を与えないポリマーは、共存するタンパク質への影響が少なく変性を抑制する傾向があると考えられる。
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