研究課題/領域番号 |
08680936
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
阿部 一彦 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90212539)
|
研究分担者 |
鈴木 憲 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90216375)
|
研究期間 (年度) |
1996 – 1997
|
キーワード | ラメラ状相分離構造 / 抗血栓性材料 / 血小板膜グリコカリックス / 血小板膜骨格 / 透過型電子顕微鏡観察 / 画像解析 / 貯蔵顆粒 / PHEMS-PSt-PHEMA ABA型ブロック共重合体 |
研究概要 |
本研究は親水性ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)と疎水性ポリスチレン(PSt)のセグメントが交互に規則的に並ぶラメラ状の相分離構造を有するPHEMA-PSt-PHEMA ABA型ブロック共重合体(HSB)表面の抗血栓性機序の解明、とりわけ血小板内への刺激伝達抑制機序の解明を目的にした。材料表面に最初に粘着するサイトであり、膜糖蛋白質(GPs)を主成分とする血小板膜グリコカリックス(GC)の微細構造及び膜貫通性GPsから膜骨格(MS)を解離した血小板及びMS非解離血小板の粘着挙動の違いについて、主に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて解析した。対照群として、PSt及びPHEMA-PStランダム共重合体(HSR)表面を用いた。血小板GCの染色にはルテニウムレッドを用いた。血小板MSの解離にはジプカイン塩酸塩を用いた。材料表面と血小板との相互作用は種々の流速を設定してマイクロスフィア・カラム法を用いて行った。1)血小板GCについて:HSB表面に対する血小板はGCを足場にした狭小の空間を保持して粘着しており、その細胞膜全体のGCの微細構造は正常血小板のそれと同様に良好に保持されていた。一方、PSt、HSR表面に対する血小板は強固な粘着を示すように血小板GCの狭小の空間は観察されなかった。そして、その粘着血小板の外表面のGCはところどころ欠損して観察された。2)MS非解離血小板を用いた場合:PSt及びHSR表面に粘着した血小板は活性化を受けており、貯蔵顆粒(SG)が放出された伸展形を呈していた。一方、HSB表面に粘着した血小板は著しく活性化が抑制されており、SGが豊富に保持された球状形を呈していた。このHSB表面での1μm^2当たりSG数は正常血小板のそれとの間に有意差はなかった。3)MS解離血小板を用いた場合:PSt、HSR及びHSB表面に粘着した血小板はいずれの場合も球状形であり、SGは豊富に保持されていた。これらの材料表面での1μm^2当たりSG数は正常血小板のそれとの間に有意差はなかった。以上のことより、流速の違いを問わず、HSBの相分離構造表面は血小板膜の安定性に寄与し、血小板GCからMSへの刺激伝達を阻止することにより血小板の超微形態変化を抑制することが示唆された。
|