高齢化社会を迎え、老人性疾患をどのように効率的に治療するかは将来の大きな問題となりつつある。特に骨粗しょう症は、極めて多くの潜在的な患者が存在し、発症の後に寝たきり老人化する危険性が高くその治療の発展が望まれている。この疾病はおもに閉経後の女性、高齢者にip発し、カルシウムなどの栄養障害で骨の吸収は正常だが骨の添加が不十分なため骨組織が海面様の多孔性となり、機械的強度低下することに起因する。筆者らは、これまでアパタイトセメント類の自己硬化機構と生体親和性に着目し、このセメントをDDSに応用し、抗生物質、抗炎症c7、ポリペプチド、抗癌剤のDDSのin vitro薬物放出を報告し、生体硬組織への効率的な薬物放出が可能であることを示してきた.今回、筆者らはこれまでに、アパタイトセメントからの薬物放出が生体液中のカルシウム濃度に依存している事実を確認した。これは、正常時には生体硬組織は生体液中ではカルシウム濃度は過飽和になっていることからアパタイトに転移しているセメントの空隙中でアパタイトが析出し細孔の曲路率と空隙率が増加するためと思われる。これに対して骨粗しょう症ラットの血中カルシウム濃度は正常の半分以下であることから、このDDSを用いることにより、病態が悪化しカルシウム濃度が低下したときに薬物を放出し、カルシウム濃度が正常域に達したときには薬物の放出を抑制する、カルシウム濃度に依存し薬物放出を制御するシステムを構築することができる。筆者らはこの自己硬化型セメントを骨粗しょう症治oテに応用するため、代表的な薬物として活性型ビタミンDやエステラダイオールを使用ことにより、血中カルシウム濃度が上昇し病態が改善されてくれば、アパタイトセメントの表面や細孔内部へのアパタイトの析出により薬物放出が抑制される。再び病態が悪化したときにはこれに呼応して自動的に薬物が放出を再開することができる。この薬物放出自己制御現象は同様な薬理効果をもつ医薬品、についても適用することが可能である。このようにアパタイトセメントは病態が悪化したとき、その病態の程度のパラメータである血中カルシウム濃度を薬物送達デEoイス自身が自動的に感知して必要な薬物量放出することができる。以上のことから、アパタイトセメントはDDSの機能を有する人工骨として実用化が近いインテリジェントバイオマテリアルということができる。
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