研究概要 |
覚盛の著作である『菩薩戒通別二受鈔』(以降『二受鈔』)と『菩薩戒通受遣疑鈔』(以降『遣疑鈔』)の写本及び版本を調査した(五月、六月、七月、八月 調査旅費)。『二受鈔』は唐招提寺に所蔵される応永二年の版本を閲覧することができた。この応永二年の版本を底本とし、京都大学所蔵の日本大蔵経の原本と大正蔵など(大谷大学所蔵写本は散逸)と比較しながら校異を作成し、テキストを作成した。合わせて書き下し、注釈を作成した(この時、コンピューターの検索等用いた。設備備品費)。これら全ては次年度に発表する予定である。また『遣疑鈔』については東大寺図書館に貞享四年の版本を閲覧し、また高野山大学図書館に写本を閲覧した(その他経費 文献複写等)。この写本は、室町期にまで遡るものと推定され、鎌倉時代末期の著作である『天台菩薩戒義疏聞書』に引用される良遍の『遣疑鈔』とほぼ同文であることが確かめられた。良遍の『遣疑鈔』と覚盛の『遣疑鈔』とは、良遍が唯だ自分の名を冠した、ほぼ同じものであったと考えられる。覚盛の『遣疑鈔』、、高野山大学所蔵の写本を底本とし、大正蔵所収本、貞享四年版本、日本大蔵経本を対校本として校異を行いテキストを作成した。また書き下し、注釈も作成した。これは発表の許可を学位論文の添付資料として得たので、その折に発表する予定で、未発表である。覚盛と良遍の戒律理解、およびその思想的特徴について論文をまとめた。覚盛に関するものは未発表であるが(現在手直し中)、良遍のものは、論文「良遍の戒律理解」(『大倉山論集』40,12/1996)に発表した(消耗品、専門的知識の提供、謝金などを使用)。また覚盛や良遍の活躍した十三世紀前半の学僧達(特に四箇大寺)に、両人の戒律思想が影響を与えたことを見いだし、次の研究へと続くものを得た。
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