研究概要 |
本研究の目的は、人間が自分自身の記憶状態および自ら用いる記憶方略の有効性に対する監視・点検(記憶モニタリング,memory monitoring)をどの程度正確に行うのか、さらにそうした認知的技能が記憶課題への学習経験の蓄積に伴ってどのように変化・向上するのかを実験心理学的方法を用いて検討することにある。一般成人(大学生・短期大学生)を対象に、自由再生課題を用いた心理学的記憶実験を実施し、記憶モニタリングの正確度を測定し、学習経験の関数としてその変化を捉える。 当初の研究計画のとおりに記憶実験が行われ、主として、次のような知見が得られた。 1.刺激項目を比較的長期にわたって記憶保持する必要がある場合には、被験者は長期記憶保持に有効な連想的リハ-サルを、一時的保持に適した機械的反復リハ-サルよりも頻繁に選択的に使用し得る。 2.再生可能項目数の予想に反映される記憶モニタリングの正確度は項目リストの学習の進行に伴つて変化するが、その正確度は必ずしも直線的に向上するわけではない。 3.しかしながら、そうした記憶モニタリングの正確度は、同一実験課題の連続実施によって確実に向上していく。すなわち、記銘学習の経験の蓄積によって記憶モニタリング技能の向上が図られることが示唆される。 4.しかも、被験者が連想的なリハ-サル方略を用いて刺激項目を記銘する条件の方が、機械的反復リハ-サルを用いて記銘する条件よりも、記憶モニタリングの正確度の向上の程度は著しい。 上記1の研究結果は、清水(1996)にまとめ公表した。同じく2〜4の研究結果は、1996年の国際記憶会議(International Conference on Memory)において発表し、現在、論文を執筆中である。
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