本研究では、1995年1月17日の阪神大震災で特に大きな被害を受けた分譲マンションの復興過程について、その全体像を明らかにした。具体的には、「建替」が復興の選択肢として浮上するほどの被害を受けた分譲マンション23棟について、その復興過程において中心的な役割を果たした人物への面接調査と、関連の文献資料に基づいて、(1)被災当初から復興に至るまでの過程を「初動フェーズ」「決定フェーズ」「事業化フェーズ」にわけてモデル化し、(2)復興形態(建替か補修か)、復興の成否、復興に要する時間を規定・左右するコンフリクトを剔出し、(3)それらのコンフリクトの帰趨によって、復興過程の類型化を行った。(2)については、1)初動フェーズにおける復興方針策定、2)既存不適格への対応、3)資金計画、4)必要多数獲得工作、5)建替計画頓挫後の復興方針策定、6)事業フェーズにおける資金調達、が復興過程の岐路となっていたことが明らかになった。(3)については、1)補修一枚岩(復興方針を左右するコンフリクトなく補修に決定)、2)初動紛争後補修(初動フェーズにおいてコンフリクト1)2)が存在、結果的には補修)、3)移行型補修(当初の建替計画が頓挫、コンフリクト5)の結果、補修方針に移行)、4)建替一枚岩(区分所有法に基づきほぼ一枚岩で建替に決定)、5)紛争後建替(コンフリクト4)5)を経て結果的には建替)、6)解体後建替(建替計画策定前に解体、建替)の6パターンが見いだされた。今後、復興過程をゲーム理論に基づいて定式化するとともに、大被害を受けた分譲マンション約300棟のすべてを対象にした実態調査を実施し、阪神大震災における大被害分譲マンションの復興過程の全貌を明らかにする予定である。
|