本研究は、南米ペル-からの日本出稼ぎ者のうち、沖縄の特定地域の出身者とその子孫を対象にした継続的研究の成果(平成5年〜6年度の科研費・特別研究員奨励研究「南米および太平洋諸地域における沖縄系移民の適応過程についての社会心理学研究」)を受けて立案された。対象を限定することによって、南米という地域、ペル-という国家、あるいは「日系」という、大きな単位のエスニシティを軸にしたネットワークだけでなく、より小さな共同性を軸としたネットワークの形成過程や個々人の日本体験の「質」をすくい上げることが可能になると考えた。 集落出身者とその子孫(二世、三世)の動向をおさえたこれまでの研究成果を受けて、栃木、群馬、神奈川など関東地方を中心に対象者の家庭を直接訪問し、聞きとり調査をおこなった。来日から定着に至る過程を把握しながら、日本体験についての具体的な〈語り〉に耳を傾けた。その結果、とくにつぎの諸点が浮かび上がった。(1)日本に出稼ぎにきている集落出身移民の子孫たちは、集落出身者の子孫、あるいは沖縄系、日系という様々なレベルの共同性を充分に活用して日本に渡り、さらに日本ではラテン系、ペル-出身などの共同性を軸にネットワークを形成しつつある。ただし、(2)長期的にみると、かれらの移動形態はおもに一世を源とする「家族」単位でおこなわれている。(3)滞在長期化に伴い、日本での職業的社会化の過程は徐々に多様化する傾向にある。さらに、(4)日本での定住を志向する人たちが現れている。 また面接だけでなく、対象者の生活の現場にできるだけ近づくために、ペル-料理店やラテン・ディスコなどでの参与観察に着手した。調査研究をさらに継続する予定である。
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