研究概要 |
本研究では,心拍率、最高・最低血圧,指尖末梢皮膚温,皮膚伝導度の各精神生理学的指標と、実験的に操作されたeffortful次元(積極的対処の採用しやすさの程度)の変化との関連を明らかにすることを目的とした.特に積極的対処の採用しやすさの程度を,課題遂行にともなう賞の随伴性によって操作することとし,この随伴性の違いが各種生理反応に及ぼす影響を調べる. 実験で用いる課題は,単語の完成課題(アナグラム)とし,被験者は大学生37名とした.実験は個別実験であり,各被験者はランダム随伴無群,随伴未完全群,完全随伴群に分けられた.すべての被験者は3つの課題セッション(各18問,うち,不可能問題50%)に取り組み,回答することを求められた.各セッション中の生理指標が測定された.第1セッションはすべての群において,正答・回答なしに対する報酬の随伴性は,70%/30%であったが,2,3セッションでは,随伴無群では50%/50%,完全随伴群では100%/0%であった.随伴未完全群では3セッションいずれも70%/30%のままであった. 結果は以下の通りである.随伴無群と随伴未完全群では,最高・最低血圧がセッションを経るにしたがって減少した.一方,完全随伴群では,ほぼ同じ水準が維持されていることが確認された.皮膚伝導度はすべての群で減少し群間に差は無かった.末梢皮膚温度は完全随伴群の第3セッションで上昇した.報酬の随伴性が完全であることが,積極的な対処方略の採用度を維持し,「活動的な快感」を高めること,そしてこのような状態に被験者があることは,高い血圧レベルの維持と末梢皮膚温上昇によって予測可能であることが示唆された.
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