本研究の目的は、対人コンピテンスの概念の文化的特有性を検討するため、米国人と日本人比較することであった。これを実施するに当たり、日本的および西洋的な対人コンピテンスの項目を合計106を作成し、日本の大学生389人と社会人623人に実施した。米国のデータは協力大学においての人間実験被験者倫理委員会の手続きが長引いたため、現時点では未入手である。全被験者をまとめて因子分析を行った結果、8つの因子が抽出され、日本的対人コンピテンスの構造が明らかにされた。因子の信頼性係数は59-83の範囲にあり、外的基準変数による妥当性(社会的経験、年齢、人間関係に対する満足度)および並存的妥当性(菊池(1988)と堀毛(1988)の社会的スキル尺度との相関)も十分な水準にあることが証明された。引き続き米国のデータを分析し、引き出されたエティック法(derived etic method)によって、両文化の特有な因子構造および共通の構造を明らかにし、相違性と相似性について継続して検討する。
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