研究概要 |
本研究は、次の2点を目的としている。 1.欧米でこれまで示されてきた、「ポジティブ・イリュージョン(以下PI)が精神的健康に良い」という傾向が、わが国でも実際にみられるのかを検討する。 2.自己複雑性という個人差傾向が、PIの形成や維持に関連するか否かを検討する。 調査1 方法 本調査は質問紙法を用いて行った。調査対象者は、首都圏の大学に在籍する大学生および看護学校生計434人。使用した主な尺度は次の通りである。PI尺度(独自に作成)、Beck Depression Inventory(以下BDI)、自尊心尺度(山本ら,1982)。 結果・考察 PI尺度15項目中10項目で「一般的な他者」に対する評定よりも、「自分」に対する評定が有意に高かった。この結果、わが国においてもPIがみられることが確認された。さらに、15項目中について因子分析を行い、4因子を抽出した(運・才能因子、金銭獲得期待因子、肯定的人生期待因子、肯定的家庭生活期待因子)。この4因子と他の尺度との関連を検討した結果、4因子ともBDIと有意な相関を示した。以上の結果から、PIは精神的健康との関連が深いことが示唆された。さらに、PIは自尊感情との関連が強いことも示されている。 実験1 実験対象者は、首都圏の大学に在籍する大学生80名。この被験者の自己複雑性を測定し、続いて実験操作されたテストを実施し、結果をフィードバックした。その後、結果に対する被験者の評定と、その他の個人差傾向に関する質問紙(調査1で使用したもの)に回答を求めた。ここでは、PIと自己複雑性の関連を検討したが、結果については現在分析中である。
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