理科系の新規大卒者がどのようなメカニズムで就職するかに関して、文化系大卒者と比較分析することが本研究の目的であった。それを明らかにするために、今年度は入学難易度がほぼ等しく所在地(首都圏とそれ以外)と設置者(国立と私立)が異なる総合大学3校の教官・学生・就職担当職員を対象におもに聞き取り調査と、調査機関からの資料の収集を行った。その結果、理科系大卒者でも自由応募による就職がほぼ半数を占め推薦応募はかならずしも多くないこと、推薦応募といっても学生が自主的に就職活動を行って内定を得たのちに形式的な推薦状を大学が発行するケースがかなり含まれていること、ただしこれらの傾向は大学・学部や専攻による差異が大きいこと、などが明らかになった。しかし他方で、主要企業へは推薦応募が中心であること、その際の学内選考は成績を中心になされるが専攻による差異も大きいこと、求人と異なる専攻の学生を推薦しても採用されるケースがあること、大学から推薦される学生がすべて採用されるとは限らないこと、などもあわせて明らかになった。これらの結果を文化系と比較すると、理科系でも文化系と同様に市場メカニズムが中心で、大学と雇用主との取り引きメカニズムが作用する余地は大きくないと考えられる。それにもかかわらずなぜ一部の企業が(形式的な)大学推薦に固執するのか、などは残された課題である。そこで今後は調査対象を雇用主に拡げるとともに、採用後の職務内容との関連も視野に入れて研究を進化させる予定である。
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