平成4・5年度に千葉県千葉市で行なったパネル調査のデータ、および平成6・7年度に東京都調布市で行なったパネル調査のデータを基本に、パネルデータの計量的解析法についての開発を行なった。まず、2つのパネルデータの一部の項目で2時点間で矛盾する回答があり、まずこの回答の整備を行なったが、こうした回答は少なからずあり、パネル調査上の大きな問題といえる。本研究では聞き取りによっていずれの時点での回答が正しいのかを確認したが、とくに顕著な傾向は示されなかった。次に解析法であるが、両調査とも、2時点目時点でのサンプルの欠落が大きく、このために潜在構造方程式モデル(sasのCALIS)をもちいるパラメータの値が1時点目のデータを用いた時と著しく異なってしまうという結果を招いた。その時点で推計されたパラメータを用いて尺度を構成する方法にはかなり危険がある。むしろ、2時点目で少数になってしまうパネルデータの特性を活かすのであれば、パラメータに依存しないブール代数を用いた非統計学的方法による分析が効果的で、この方法を用いることで時点間の変化についてのパターンを把握することが有用であることが示された。なお、ブール代数分析では各データを1、0の2件法に変換する必要があり、このときに記述的データのスキャナでの読み込み→データベースソフト(DB-Proを使用)によるその要約→2次的な要約による2件法化→ブール代数ソフト(qca)による解析、という手順によって非定型的な自由回答項目の解析が可能であることがわかった。ただし、この方法は多大な労力を必要とし、項目の要約にあたっては主観的な判断が重視されざる得ないという問題点もある。最後に、日本家族社会学会の全国家族調査の予備調査質問紙(データは間もなく公開される)を専門家に配付し、パネル調査でとくべき問題、解析法についてのアンケートを行ない、現在その結果を集計中である。
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