本研究の目的は、音声言語発達と動作表現の発達との関連に着目し、動作表現がどのようなレベルに達すると有意味語が出始めるのかを明らかにすることにあった。資料収集には歌遊び『げんこつ山のたぬきさん』の場面を観察し、対象児の音声と動作の受信-発信状況を分析する「初期音声言語行動評価法」(菅井.1994)を用いた。対象児は障害幼児通園施設の在籍児27名であった。1年間の分析では標記の目的に接近することは困難であり継続的かつ、より詳細な観察・分析の必要性を感じた。 しかし、過去のデータも含めて分析した結果、5事例によって歌遊びにおける音声と動作と関連について検討していく観点を得ることができた。それは、(1)動作記憶が不正確な部分では音声が小さく不明瞭になった例、(2)音声発信が滞った時、まず動作から発信し直し続いて音声発信し直した例、(3)音声発信が滞った時、動作で試行錯誤し動作に対応した誤りが、音声発信にも見られた例、(4)全曲を通して歌えるが、提示される歌に対応させながら動作発信することが困難だった例、(5)歌うと動作がゆらいでしまった例、であった。これの例から歌遊びにおける音声発信は、動作イメージの形成と記憶、動作順序の記憶等と密接に関連があると考えられた。また障害幼児の音声言語の受信-発信を考える際、動作への着目とその発信をスムースにする状況作りが必要があることがわかった。これらの研究成果については日本特殊教育学会、国立特殊教育総合研究所紀要に発表した。
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