明治期において漢文訓読体で翻訳された、学術書・小説など幅広い分野の翻訳書を、江戸時代の漢文訓読語法と比較しつつ調査することにより、江戸から明治にかけての漢文訓読語法の変遷を解明し、明治期の漢文訓読体の性格を明確にしていくことが本研究の目的である。このため、以下の1〜3のような調査・研究を行った。 1.明治期の翻訳書のマイクロフィッシュを購入してそれを焼き付け、また、国立国会図書館・東京大学付属図書館などを訪ね、資料を調査した。本研究で特に焦点をあてて調査したのは、下記の翻訳小説である。 『欧州奇事花柳花柳』および『通俗花柳春柳』 『新説八十日間世界一周』および『通俗八十日間世界一周』 『通俗伊曽普物語』ほか明治期における『イソップ物語』の翻訳書10種 2.上記を含め、調査した翻訳書の分野・原語・翻訳者・刊年、そして特徴的な語法(特に漢文訓読語法)をコンピュータに入力した。 3.上記1に記した翻訳書をスキャナとOCR(文字認識)ソフトを利用して、コンピュータへの入力作業を行った。ただし、古い資料であるため、OCRソフトの認識率が低く、かなり多くの校正・修正作業が今後の課題として残った。 上記2の調査・研究により、明治期の翻訳書を「漢文訓読語法」という観点から整理していく見通しが得られた。また、3の作業によって作成されるテキストデータベースは、明治期の翻訳語法の解明に役立っていくものと思われる。
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