研究概要 |
1 長野県中・南部方言地の、木曾福島町,開田村を調査地点とし て選定し、アスペクト表現の体系と運用の実態、動向を究明するために、高年層(60歳以上の男女)と若年層(中学校1〜3年生の男女)を対象として、調査を行った。 2 アスペクト表現形式について、高年層では、木曾福島町は「〜トル」、開田村は「〜イタ」が圧倒的である。木曾福島町の中でも旧新開村にあたる地域では「〜イタ」を用いる傾向が認められる。「〜ヨル」は木曾福島町だけに見られる。一方、若年層では、木曾福島町は「〜テル」、開田村は「〜テル」とともに「〜トル」が用いられている。「〜トル」に関しては、使用の中心域が開田村のほうに移ってきている。「〜イタ」は開田村にのみ観察される形式となり、分布の境界が旧行政区画ではなく、現在の行政区画へと変化している。 3 回答はすべてコンピュータ入力し、調査項目ごとに整理した。グラフ化を行ったものもある。これらの結果の一部を研究成果報告書として刊行した。順次、このデータに分析を加え、論文として発表する予定である。地理的・歴史的な位置づけを考慮し、社会言語学的な観点も取り入れながら、接触地帯におけるアスぺクト形式の動態を解明しようとしている。 4 今後の研究の展開としては、調査票による回答結果と、録音収集した談話資料、特に、自然談話資料の分析結果との比較を行うことを考えている。これは、言語運用の「意識」と「実態」との関連を明らかにすることを意図するものである。談話資料は文字化テキストを作成して、音声とともにデータベース化する計画である。
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