時間と予算の制約により、享保から明和のうち、宝暦・明和を冠する時事雑録に対象を絞って、書誌・内容調査を行った。これまでに調査を終えた雑録は、京都大学付属図書館谷村文庫蔵『明和耳聞録』『明和太平記』『元享間雑記・享宝間雑記』、国立公文書館内閣文庫蔵『宝暦広説集』『宝暦安永御転書留』『明和聞書』、国立国会図書館蔵『宝暦聞書』『宝暦風俗集』『明和視聴録』『明和正宝録』『享保夢物語』、東京大学史料編纂所蔵『宝暦以後旧記』『宝暦鎮党録』『明和記』『明和天明年間公事録』『享保宝暦間聞書』、東京大学総合図書館蔵『宝暦書』の17書目である。調査を予定しながらも、調査し得なかったものに、宝暦の時事雑録のうち、大倉精神文化研究所蔵『宝暦記』『宝暦後記』・学習院大学蔵『宝暦事件』『宝暦事件ニ就イテ』・栗田文庫蔵『宝暦天明覚書』の5点、明和の時事雑録のうち、宮内庁書陵部蔵『明和記事』の1点、計6点がある。これらについては、可及的速やかに調査したいと思っている(平成9年春調査の予定)。 現段階において、すでに明らかであることは、これらの時事雑録のうち、同じ内容の本は一点もないことである。それぞれの雑録は、著録者・記録対象となる地域等を異にしており、未調査の書目についても同様の事が、かなり高い確率で予想される。調査済みの書目のうちで、既に活字翻刻がなされ、内容が広く知られているものの同系統本は、わずかに2点であった。国会図書館蔵『宝暦聞書』が、上方芸文叢刊『上方巷談集』所収「新編宝暦雑録」の系統の本であり、同館所蔵『明和視聴録』が、浪速叢書所収「明和雑記」の同系統の本である。この2点については、『岡山大学文学部紀要』第27号(平成9年夏発行予定)において、その詳細を報告する予定である。新出の大阪の時事雑録がなかったため、小説作品との比較については為し得ていない。
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