多田南嶺は、有職故実家であり浮世草子の匿名作者でもあった。有職故実家としては写本随筆を多く残し、ほとんどが未紹介・未翻刻である。浮世草子作品については、いまだ未翻刻のものが多く、南嶺作という認定が宙に浮いたままの作品も未だ存する。本研究では、この南嶺の学問と文芸の両面を統合的に捉えるための文献収集・分析を中心とする基礎的研究を行った。 1.収集 未見の写本随筆を中心に、未踏査の東京・関西方面の図書館・文庫を訪ね、閲覧調査を行った。同時に、それらの文献の紙焼写真・ゼロックスコピー等で収集した。20タイトル、60部ほどの文献を収集した。写本は同じタイトルでも内容面で微妙な差異が有り、そうした調査のための基礎作りを行えた。 2.分析 蒐集した写本随筆について、書誌的調査、異本校合・対照、内容の整理、などを行った。内容の整理に関しては、パーソナルコンピュータを利用して、データベース化を計っている(継続中)。 写本随筆と浮世草子作品とについて、作者の認定、学問と文芸の関り方、この2点を中心に関連性を調査した。この成果に関しては、現在論文を執筆中である。これは、南嶺浮世草子の研究において、文芸と学術の融合の有り方を示す、具体的かつ典型なモデルケースとなる。 浮世草子作品を2作翻刻した。これは、勤務校のホームページ(インターネット)で一般に無償で公開する。(URL http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/^-hangyo)
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