1.戦前のパリで出版された前衛芸術誌transitionの研究を中心にモダニズム文学における言語の問題を考察する計画であったが今年度はそのための不可欠の前提であるモダニズム(あるいはアヴァンギャルド)とは何かというテーマに関する理論を学ぶことに重点を置いた。その結果近年の大きな論議の的であるポストモダニズムの問題圏をそれが通底する様がより鮮明になり、特にサミュエル・ベケットがモダニズムとポストモダニズムの関係を考える上で有益であるとの認識を新たにした。現在この問題を言語というテーマに即して考察している所である。 2.transition誌とその周辺をめぐる研究書を読むことによりこの雑誌の全体像を把握するための予備的作業を進めた。 3.計画通りパーソナル・コンピュータを購入し、インターネットを通じての検索.海外研究者との情報交換を容易にすることができた。まだ不慣れであるが今後活用してゆきたい。 4.今年度は西欧のモダニズム運動に対応する我が国の前衛芸術運動についても調査する糸口を見出すことができた。とりわけ小説家横光利一について集中的に文献を読んだ。副産物ではあるがいずれこの方面でも研究成果を発表したい。
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