本研究の成果である「ナーナイの民話と伝説3」は、アムール川下流のツングース満州語の一つであるナーナイ族を実地調査して口頭文芸資料を録音採集し、その各単語を文法的に分析しつつ、音韻表記によって文字化して、ナーナイ語テキストを作製し、これを刊行したものである。これは、統語論をふくむナーナイ語の語学研究、ナーナイ族のフォークロア研究、文化人類学的研究の重要な資料になる。しかもこのテキストは録音のままを表記したもので、話し手から語った通りのテキストである点がその価値を高めている。 ナーナイ語は、今日その話し手の数が急速に減少し、日本の近くにある絶滅の機器に瀕した言語の一つである。その言語の記録は緊急事であるので、その点でもこの業績の意義は非常に大きい。
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