研究概要 |
本研究の結果、次のような知見を得ることができた。 1.刑事訴訟法第11条に規定される捜査(enquete)および予審(instruction)の秘密の保護の制度について-この規定は、ジャーナリストには直接には適用されないが、裁判官、司法警察吏(officier de police judiciaire:検事、警視など)、警官(agent de police judiciaire),書記官等にこの規定が適用されることによって、間接的に刑事事件報道を制約する規定となっていることが明らかになった。 2.1881年出版自由法(フランスにおける現行の言論基本法)の諸条件に規定される弁論(debat)および判決(decision)の公表の原則およびその例外の制度について-1881年法によって、「裁判所における審理に関し、善意でなされた正確な報道」の自由の原則が確立されている(第41条)が、(1)名誉毀損訴訟の報道が、人の私生活に関する事実、10年以上溯る事実、大赦もしくは時効の対象となった法律違反を構成する事実、名誉回復や再審によって消滅した有罪事実に関する場合(第39条)、(2)親子関係、養育費請求、離婚、別居、婚姻無効、中絶などの事実に関する場合(第39条)には、当該事件の報道が禁止されることが定められていることが明らかになった。 3.刑法典第226条および第227条に規定される裁判所の独立および権威の保護の制度について-両条文によって、(1)終局裁判の決定以前に証人の証言や司法決定に影響を及ぼす可能性のある解説、(2)裁判所の行為および決定に対する不信をかきたてようとする行為、が禁止されているものの、これらは、純粋に学術的な解釈、再審を求める行為、などには適用されないことが明らかになった。
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