本研究の目的は、外国判決の承認要件である承認管轄(民訴法200条1号)の沿革を、その母法であるドイツ法の資料を手がかりに研究することであった。本年度の科研費の交付により、重要文献の収集及び購入を実現することができた。また、研究の中間報告を専門の研究会において発表し、また実務家の意見を収集することで現代的な問題意識にも留意することができた。 本研究の成果として、これまで民訴法200条1号の承認管轄要件の沿革について得られた知見は次のようにまとめることができる。すなわち、18世紀の終わり頃、ローマ法をベースとする神聖ローマ帝国及び普通法の時代には、外国(非ドイツ)判決の承認はほとんど原則として確立されていた。しかし、ドイツ帝国の崩壊によって、ドイツの諸邦の国家的主権性が強調されるようになり、外国判決に関しては非承認がむしろ原則になっていた。大転換は、フォイエルバッハが「鏡像原則-民訴法200条1号にも採用されると考えられる承認管轄のルール-」を提唱したことで生じ、ついに、この原則は1862年のハノ-ヴァー草案に採用されて現行ドイツ法、そして日本法に至る。この過程は、承認管轄の鏡像原理の採用がいかにして各邦の分裂状態を克服し、外国判決の尊重を可能にしたのかを明らかにするものである。 以上のような概観及び展望をもって、本研究はまだ継続中であり、研究課題それ自体を扱う論文も現在準備している。それ以外に、本年度においては、本研究の過程で別紙のような業績を上げることができた。それらは、関連文献の翻訳、紹介、あるいは具体的ケースを扱う判例研究であり、本研究にとって基礎的な重要な研究成果であるといえる。
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