近年、捜索差押えという従来の捜査手段を通じての、大量の個人情報を保存しているコンピュータディスクやファイルの獲得、さらには電子的機器を用いた通信傍受による個人情報の獲得を通じて、刑事手続における個人情報獲得の可能性が広がる一方、各捜査機関が捜査に関連して入手した様々な個人情報をデータベース化し、全国的に相互に利用可能にすることが徐々に実施され始めている。こうした中で、捜査機関が捜査に利用する目的で保有する個人情報は莫大な量になりつつあるが、それに伴い生じうる個人情報保護上の問題を早急に解決する必要がある。一般に、行政機関が保有する個人情報保護法は、日本においても法律および条例レベルの規制が存在するが、捜査機関の保有する個人情報は対象外とされているため、特別法による独自の規制が必要がある。規制に際しては、個人情報の保護が個人の人格権に関わるという憲法的位置付けを明確にした上で、情報の自己決定権という観点から、目的の明確性、目的拘束性の原則、訂正請求権、破棄・返還に関する規制等が検討されなければならない。とりわけ、プライバシーの侵害性の高い特殊な捜査方法を用いて獲得した個人情報に関しては、より厳格な目的拘束性が必要である。これらの観点から、いくつかの国際的勧告や諸外国における立法が設けられているので、これらの紹介および考察を現在取りまとめ中である。近いうちに、雑誌論文として発表する予定である。
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