不可逆的な時間の中で経済活動が実行され、個別の構成要素は簡単な振舞いしかしないのに、そのシステム全体の振舞いはきわめて複雑で、解析が不可能であり、シミュレーションによって構成的に理解するしかないシステム(複雑系)としてわれわれの経済システムを捉えようとするとき、最適化をベースに主体行動を考え、それらの整合的な秩序としての経済的経験の解釈を基本とする従来の経済学の思考は、大きな認識論的障碍となる。そこで代替的なシステムとして、ケインズ再解釈から得られた、ローカルな情報に基づき満足化原理にしたがい判断し均衡とは関係なく実際に行動する様々な主体によって構成される並列処理系としての経済システムのモデルを構成・定式化し、その振舞いをシミュレートするシステムをWindows95上のVisualBasicで開発。その成果は「福井シンポジウム96-複雑系と多様性」のポスターセッション(プロシ-ディングスはSpringer-Ferlagより97年3月出版)および「進化経済学会」で報告された。
|