Romer(1986)やLucas(1988)の研究以降、内生的経済成長論が盛んである。内生的成長モデルの実証分析は当初クロス・セクション・データを対象に行われていた。しかし、最近はその問題点を除くためにいくつかの研究で時系列データを利用する研究が行われている。本稿では一般的な内生的成長モデルが持つ経済成長あるいは所得水準が恒久的変化を含むという命題を念頭に、それらを時系列分析の手法によって検証した。対象とするデータはオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の8カ国における1900年以降の長期にわたる一人当たり実質GDPデータである。ここで利用する時系列分析の検定方法は、Dicky-FullerタイプとPhillips-Perronタイプの2つのAR単位根検定、Kwiatkowski、Phillips、Schmidt and Shin(1992)のMA単位根検定、それにLevin and Lin(1996)で新たに提案されたパネルデータを対象にした単位根検定である。Jones(1995a)やBen-David and Papell(1995)も同様な問題意識からDicky-Fullerタイプの単位根検定を用いているが、本文で示すような非確率項の特定化などの厳密な手続きを行っていない。我々は、Dicky-Fullerタイプの単位根検定をCambell and Perron(1991)で示されたAR項の選択や非確率項の特定化も含んだ手続きをふまえて行う。また新たにPhillips-Perronタイプの単位根検定やMA単位根検定、さらにパネル単位根検定をあわせて行う。この結果、いずれの国でも経済成長率は恒久的変化を含んでいないこと、また、所得水準については米国だけが定常で、他の国は恒久的変化を含む可能性が高いことなどが明らかになった。
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