本研究は、従来の心理的分析にとどまらずマネジメント論としての顧客志向マーケティング研究の一環であり、医薬機関向け医薬品のマーケティングの実態分析を取り上げたものである。研究企画立案においては、本年度中に、医薬品流通制度の政策分析、医薬品メーカーのマーケティング・モデルの検討、各医薬品メーカーのマーケティング分析、各医薬品メーカーの営業分析、医家(病院・開業医)の医薬品マーケティング評価、医薬品卸の活動分析までをとりあげる予定であったが、近年の医薬品流通制度の改編の複雑さのために、主に流通制度改変の流れとその実態の把握に焦点を当てた。 90年代の医薬品流通制度の改変についての調査研究において、特に注目したのが、独禁法ガイドラインの提起、新仕切価格制、医療用医薬品プロモーションコード、医療機関に対する金銭提供行為に関する公正競争規約運用基準の新設、症例報告収集計画に関する公正競争規約運用基準、「MRのあり方検討会」報告、GPMSPである。これらの新政策について、導入時の状況認識、政策目標、業界関係者の評価、導入の経過、そして導入後の再編された流通制度の概要について検討をすすめた。これらの新政策は大規模な流通再編と言うべきものであり、医療費削減の一環としての薬価のあり方問題を背景に公正な競争の確保、業界内に浸透する癒着構造の見直しという性格を持つものである。同時に、これらの新政策は、患者や家族にとっての医療、医家(病院・開業医)のニーズに応えサポートを図る医薬品マーケティング・営業への転換という、顧客志向マーケティングの進化という性格をも合わせ持つものとして分析を行なった。 次年度は、引き続き、医薬品メーカーのマーケティング・モデルの検討、各医薬品メーカーのマーケティング分析を行なう予定である。
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